楠木建さんの「好きなようにしてください」が面白い。KindleUnlimitedで読めます。

楠木建さんの「好きなようにしてください」という本を読みました。

内容としては、(主にキャリア的な)人生相談に対して、ひたすら「好きなようにしてください」と優しく突き放していくのですが、そこかしこに楠木さんの価値観がにじみ出ていて、若輩者の自分にはとても勉強になりました。

 

作者について

1964(昭和39)年東京都に生まれ、幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院国際企業戦略研究家(ICS)教授。一橋大学商学部卒、同大学院商学研究科博士課程修了。専門は競争戦略とイノベーション

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一橋大学で教鞭をとっておられる、経営学が専門の学者さんです。

この人、文才がすごいです。語り口がとても面白く、むずかしめなこともとても分かりやすく説明してくれる印象で、ほんとうに頭の良い方なんだなと感じます。

 

 

内容をざっくりというと、、

 

NewsPicksに寄せられた(主にキャリアに関する)種々の人生相談を、楠木さんの価値観から「好きなようにしてください」を決め台詞にばっさばっさとこなしていく本です。

寄せられる相談は全部で50個。最低でも一つは、一度は悩んだことのある相談あるいは現在進行形で悩んでいるようなことがあると思います。

参考までに、一部ピックアップするとこんなんです。

・大企業とスタートアップで迷っています。

 ・仕事で成功しても、女として負けですか?

 ・子供を海外の大学へ行かせるべきですか?

 ・いますぐ企業すべきか、一年修行すべきか?

 ・「キャリア計画がない」私はダメ人間ですか?

 ・後輩だけ高評価。上司のえこひいきに、耐えられません。

どうですか?引っかかるものありましたでしょうか。

 

どんなことが学べるか

 

とはいえ、この本を読んでよかったなと思うのは、50の質問にまさに自分が現在悩んでいることがあって、それの答えないしはヒントを得られたことではありません。

楠木さんは、それぞれの質問の回答から派生して、(質問者に対する個別具体的な相談への答えではなく)もうちょっと万人に通用するように抽象化して意見を述べていくのですが、そこを通じて楠木さんの仕事観、キャリア観、生き方、人生論みたいなものが見えてきます。

それがとても面白く勉強になりました。

↓のメモにその一部を乗っけていこうと思います。

 

印象にのこった箇所のメモ

 

幼児性について

これは「社会人大学院通いの部下が戦力にならない」、という悩みに関しての節からです。

僕が言う「幼児性」の中身には以下の3つがあります。

一つ目は世の中に対する基本的な認識というか構えの問題です。身の回りのことごとがすべて自分の思いどおりになるものだという前提で生きている人を「子ども」と言います。物事は自分の思い通りになるべき。思い通りにならないことは「問題」であり、間違っている。これが子供の世界認識です。一方の大人は、「基本的に世の中のすべては自分の思い通りにならない」という前提を持っているものです。

本来は個々人の「好き嫌い」の問題を手前勝手に「良し悪し」にすり替えてわあわあ言う。これが幼児性の二つ目です。

(~)誰かが「オレは天丼が好きだ」というのをかつ丼好きが聞いたとしても、あまりイラっとしない。イラっとする人がいるとすれば、その人は「かつ丼のほうが天丼よりいい」「かつ丼のほうが正しい」と思っているからです。でも本当は好き嫌いの話に過ぎない。本当は世の中の九割は「好き嫌い」でできています。にもかかわらず、それを勝手に良し悪しの問題だととらえてしまうので、「大学院に通ったって意味がない」とか、評価したり意見を言いたくなったりする。

幼児性の3つ目は、他人のことに関心を持ちすぎるということです。繰り返しますが、仕事の部下としてその人のことを気に掛けるのは上司として当然のことですが、仕事を離れればみなそれぞれに独立した人間です。社会人大学に行くなどという私生活が気に入らないなんて、他人のことを気にしすぎている。

なぜそうなるかといえば、本当にその人が気になるというよりも、自分の中に何かの不満や不足感があって、その埋め合わせという面が大きいのではないかと思います。自分の仕事や生活に何かさみしさや不満、鬱憤、鬱屈、屈託があって、いまひとつ充実していない。そういう人は他人の欠点や問題、もっと言えば「不幸」を見て心の安らぎを得るというか、鬱憤晴らしをするところがあります。

ぐさぐさ刺さりまくります、、。

 

スキルとプロについて

これは「楠木先生はどうやって文章がうまくなったのですか」から

あなたは「人前で話しをするスキルをもっと高めていきたい」とのことですが、「スキル」という切り口で考えているうちはまだまだだと思います。僕の理解では、スキルというのは「マイナスをゼロのレベルまでもっていく」ためのものです。その仕事をするのであれば、みんなが持っていて当然のもの、それがスキルです。みんなが持っている。プロの世界では、それは曲論すればゼロ、何もないのと同じです。

その先のゼロからプラスを作るのは何か。「この人に頼もうかな」とか、「こいつはいいな」と思わせるものは何か。それはその人に固有のセンスとしか言いようがないものです。「フォーム」といってもよい。プロにとってはこのフォームこそが己の仕事のよりどころです。

どんな分野でも、その道のプロが一番大切に懐に抱えているのは、誰もが使えるスキルやツールではなく、フォームなのです。このフォームばかりは「蛇の道は蛇」の最たるもので、長いこと時間をかけないと練り上げられません。フォームは千差万別ですから、人のをかりるわけにもいきません。借り物のフォームはいつか必ず破綻します。蛇の道を長いこと這いずり回っているうちに、「こういうのが自分のフォームだな・・・」ということが見えてくる。それを後生大事に育てていくのがプロというものです。

この頃スキル偏重な考え方をしていたので、なるほどと思いました。

確かにスキルは教科書があって(たいてい)時間をかければ身に着けられるものです。

 

環境決定論について

最後に「大企業とスタートアップで迷っています」から。

あなたは根本のところで間違っています。それは、自分の仕事を考えるときに、「仕事」ではなく「環境」を評価しようとしているということです。仕事の中身やあなたにとっての仕事の意味合いではなく、仕事を取り巻く環境に注目して、ベンチャーと大企業とどちらがいいかを比べている。あなたの今の考え方は「環境決定論」になっている。ここに非常に単純な勘違いがあります。

環境決定論の怪しさは、現実の世の中を生きている人々が日々身をもって証明しています。同じ環境にいるのに生き生きとした人とそうではない人がいるのはなぜか。その人の個人としての仕事や生活の内実、すなわち内生的な要因のほうが、環境という外生的な要因よりよっぽど説明能力が高いのは明らかです。

大学受験の合格率に注目した高校選択を例にあげてこう続けます。

ここの高校はすごく東大の合格率が高いとか、あそこの高校は合格率が低いとか、受験シーズンになると「大学合格者数ランキング」を特集記事にする雑誌がいまだにあります。これはただの「環境評価」です。

その学校の東大合格率と、そこであなたがどんな勉強をするかは、直接の関係はありません。

(~~)

僕が問題にしているのは、内実と環境をすり替える愚です。言うまでもないことですが、結果の良しあしを左右するのは環境ではなく、その人が実際にどういう勉強をしたのか、個人としてどの程度受験勉強の能力があるのかにかかっています。それなのに、進学する高校を選択するときに、良い環境に行くと半ば自動的に良い結果が得られると思い込んでしまう。

そういう人ほど物事がうまくいかなくなった時に弱い。(~~)ことの成否を環境のせいにしがちです。いい時も悪い時も理由を環境に求める。これではいい時も悪い時も悪い方向に転がっていきます。

これが一番ささりました、なんとなく評判のよい環境にいれば大丈夫だろう、こっちに行けば(自分の体験があるので)楽しめるだろうことはわかっているのだけれど、世間常識(?)的にこっちへ行ったほうが良い環境だろう、なんていう風にして意思決定することが過去何度もあります。まさにこれです。

結局責任感の欠如というか、自分の判断の責任を自分で持ちたくないがための思考放棄なんですよね、これは要反省です、、。

 

おわり