JICA地球ひろば、という市ヶ谷にある施設では、定期的に世界的な様々な問題を学べるイベントが開催されています。
今回は「食品ロスを考えるドキュメンタリー映画「もったいない!」無料上映&トーク」
というイベントに参加してきました。
食品ロスというと、コンビニの毎日の大量廃棄が頭をよぎりますが、みなさんはいかがでしょうか。
3分の1ルール/ごみ箱ダイブ/曲がったきゅうり なんてワードに関心を持ったら読んでみてください~
食品ロス問題を考える
ドキュメンタリー映画の内容は、世界各国で起こっている食品ロスの現状をカメラが追っていく、みたいな内容でした。
ゴミ箱漁りで生計を立てる若者(←貧しいから、とかではありません)から始まったので、なかなか衝撃的でした。
食品ロスって具体的にどういうこと?

日本では、食品ロスは以下のように定義されています。
「食品ロス」とは、食べられるのに捨てられてしまう食品をいいます。食品ロスを削減して、食品廃棄物の発生を減らしていくことが重要です。
(農林水産省HP)
この定義の部分にも問題があるのですが、それは後ほどにして。
食べ物がどうやって自分たちの手元まで届くかを1例考えてみると
①農家→②小売店→③消費者
なんていうふうに考えられます。このそれぞれの段階で食品ロスが発生しています。
それぞれ見ていきます。
①農家
農家の方が野菜を作る時に、作った野菜がすべて出荷されるわけではありません。
出荷に際しては、出荷できる野菜の規格というものが存在し、それに弾かれたものは廃棄することになります。
映画の中でじゃがいも農家の方が
「どれも味や栄養価はそんな変わらないのに、見た目の美しさで捨てられていくものがたくさんあるんだ」
という、現在の規格への懐疑の声をあげていたのが印象に残りました。
スーパーに野菜を並べた時に、形が不揃いで見た目にちょっと傷がついていたりすると売れ残ります。
野菜の規格は「いかに多く売れるか」という観点で定められています。
きゅうりなんか考えてみると、実際に栽培してみるとぐにゃっと曲がったきゅうりがたくさんできるそうなのですが、スーパーに並んでいるきゅうりはみんなだいたいまっすぐですよね。
曲がったきゅうりはきっと、箱つめづらい、とか、まっすぐなきゅうりのほうが売れる、とかそんな理由で弾かれているのだろうと思いますが、味も栄養価もまっすぐなきゅうりと変わらないのに捨てられてしまっているわけです。
規格は必要ですが、食品ロスの観点からいきすぎた規格もあるんじゃないか、というふうに考えてみる必要があります。
②小売店
農家で華やかな出荷デビューをかざった食物たちの多くは、流通を経て、スーパーやコンビニやレストランなんかに運ばれていくことになります。
そこでも大量の食品ロスが発生します。
<古い日付のやつは売れないから、の論理>
とあるスーパーの店長さん
「うちでは日付を2種類しか出さないようにしてるんです。新しいのを入荷したら、前の前の日付のやつは捨てる。」
またとあるスーパーでは、賞味期限を迎える数日前に、売れ残ったヨーグルトが回収され、廃棄に回されます。
まだ賞味期限がきていないのに。
これらは、古い日付のやつは売れないから、の論理で行われています。
ただ、消費期限でなく、賞味期限なのにそれってどうなのでしょうか。
<大量供給>
スーパーやコンビニへいったら、だいたいずらっと商品が棚を埋め尽くしています。
これも品揃えがよく、棚がスカスカしていない方がよく売れるから、たくさん仕入れている、そしてたくさんロスが生じる。
また、コンビニなんかでは、注文が増えてもすぐに対応できるように、余剰在庫を工場でたくさん抱えているそう。これもたくさんのロスの一部です。
<3分の1ルール>
3分の1ルールは大手小売りが始めたとされ、多くの小売店に広がった。製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつに区切り、最初の3分の1を卸を経由して小売店に納品するまでの納品期限、次の3分の1までを店頭で消費者に売る販売期限としている。最後の3分の1は消費者が食べる期間として設定されている。納品期限は「鮮度のいいものを消費者に」という目的で設けられたとされるが、このルールは他国と比べて厳しいという指摘もある。製・配・販連携協議会によると、アメリカの納品期限は賞味期限の2分の1。フランスやイタリアはさらに長く3分の2で、イギリスは4分の3とより緩やかになっているという。
(https://kotobank.jp/word/3%E5%88%86%E3%81%AE1%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB-190195)
このルールのせいで、賞味期限前でもはやめはやめに食品が捨てられてしまうようになっています。
とはいえ、これは近年見直されつつある模様です↓
フードロスを少しでも減らそうと、農林水産省が音頭をとって2012年に「食品ロス削減のための商習慣検討ワーキングチーム」を立ち上げた。参加企業は、味の素、日清食品、マルハニチロ食品など大手食品メーカー9社、国分、三菱食品など大手食品卸2社、イオンリテール、ファミリーマートなど大手食品小売など4社の計16社。
2013年には「ワーキングチーム」参加企業が、「3分の1ルール」で小売店に出荷できずに廃棄されることが多い飲料・菓子の小売店への納品期限を現行の3分の1(賞味期限が6ヵ月なら2ヵ月)から2分の1(同3ヵ月)に緩和し、販売期限については各小売店が独自に設定する試験運用を半年間行った。その結果、納品期限緩和による廃棄増のリスクが少ない上に、食品ロス削減効果が約4万tとなることがわかった。
その結果を受けて、2016年3月現在、清涼飲料と賞味期限180日以上の菓子を対象に、イオンやセブンイレブンなど大手スーパー・コンビニ11社で納品期限緩和を実施ないし移行準備中だ。他の食品についても、納品期限緩和が進むと思われる。長い間、食品業界の商習慣だった「3分の1ルール」が緩和され、フードロスが削減されることが期待される。
③消費者
消費者から発生する食品ロスは、単純な食べ残しがぱっとイメージしやすいですが、そちらよりも、
賞味期限がきたから捨てちゃおう
が注目ポイント。
日本は特にこの”賞味期限が来たら食べない意識”が強いらしいです。
賞味期限はじつは、実際の期限よりもかなり前倒しで設定されているそう。
食品メーカーとかからすれば、賞味期限を短く設定しておいたほうが万が一のクレーム等の心配が減りますもんね。
賞味期限は美味しく風味が保たれる期限なだけであって、食べ物がくさったりする期限ではないので、切れたからと言って即ごみ箱ぽい、とはしないほうがよさそうです。
ロス削減のための取り組み事例
映画の中で見られた食品ロス削減のための取り組みの事例です!
①農家が直接消費者に売る
農家の方が市場を開いて、直接消費者に売ります。
そうすれば規格はなく、形が不揃いな野菜も売ることができます。
そういう野菜もきちんと農家の人が口頭で説明すれば、お客さんも納得して買ってもらえるんですね。
②余ったものは燃料エネルギーに!
とある外国のパン屋さんでは、売れ残ったパンを燃やして燃料エネルギーに再利用していました。
どういう仕組みだったんだろう、、、ともあれただ捨てて埋め立てるとかより、再利用したほうが絶対いいですね!
③人が食べないなら家畜のエサに!(日本)
日本では、食品廃棄を集めてから、プラスチック等をより分けて、殺菌処理をして、家畜のエサに再利用する取り組みがあります。
EUでは、飼料への再利用は禁止されているそうで、これは狂牛病対策とのこと。
④ゴミ箱ダイブ
映画冒頭で紹介され、映画ラストでまた現れたごみ箱ダイバー。
彼らはごみ箱を漁り、そこから食べ物を得て暮らしています。(※ホームレスではない)
もちろん買い物もしますが、普通のひとより圧倒的に頻度は低い。
そんな生活が成り立つほど、まだまだ食べられる食物が大量にごみ箱に存在するということです。
※映画では紹介されませんでしたが、「フードバンク」という取り組みがとてもよさげ。
余っている食べ物と、食べ物を必要な施設や人とをつなぐ活動です。
http://2hj.org/problem/foodbank/
SDGsとその課題

映画の後には、学者さんがSDGsで扱う食品ロス問題の課題を解説してくれました。それについても少し触れようと思います!
国連は2030年までで様々な領域での目標設定をしており、それらはSDGs(Sustainable Development Goals)と呼ばれています。
その中で、目標12で食品ロスについても言及されています。
12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる。
これの原文が↓です。
By 2030, halve per capita global food waste at the retail and consumer levels and reduce food losses along production and supply chains, including post-harvest losses.
<SDGsにおける課題①:食品ロスと食品廃棄の定義が不明瞭>
SDGsで目標を掲げているものの、使用している”food waste”と”food losses”の定義が不明瞭だという点を指摘されていました。
この食品廃棄と食品ロスと言う言葉は、国や団体によって異なる定義で使われてしまっており、そのために適切な比較なりデータがとれないことが懸念されます。
例えば、日本では
食品廃棄=不可食品
食品ロス=可食品
と使い分けていますが、
EUでは、
食品廃棄=可食のうち小売・外食・家庭で発生するもの
食品ロス=可食のうち加工・流通で発生するもの
と定義されます。
さらに面倒くさいことに、FAO(国連食糧農業機関)では
食品廃棄=可食のうち加工・流通で発生するもの
食品ロス=可食のうち小売・外食・家庭で発生するもの
とEUと逆転してしまっている始末、、、。
<SDGsにおける課題②:何を指標にして測るか?>
また、測る指標の問題もあります。
例えば重量を指標に測る場合を考えてみます。
供給された量と消費された量の差分を持ってロスとしたいですが、重量を指標にすると例えばお米は正しく計測することができません。
(コメは水で炊くので、廃棄時にはもとより重くなります)
カロリーを指標に考えると、たとえば果物は重量は大きくカロリーが低いです。一方油脂類はカロリーは大きいけれど重量はすくない。
ですので、カロリー指標で見る場合、実際は果物のロスがとても多いのに、それが軽視されてしまう可能性があります。
難しい・・・。
おわり
自分はコンビニでバイトをしていたので、大量廃棄を毎日のように見ていたのでとてもしっくり来ました。
いろいろと
ごみ箱ダイバーダーヴィドさんのこの言葉が核心をついているように思います↓
この映画は、フードロスをなくすために何ができるかということがメインテーマですが、この問題の根本にあるのはいまの消費社会なのだということも言いたかったんです。
(http://kokocara.pal-system.co.jp/2017/01/30/waste-cooking/)
これをきっかけにフードロスについて考えてみるのはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました!